業務の見える化と棚卸しのやり方|AIに任せる仕事を見つける手順

業務の見える化と棚卸しのやり方として、仕事を一覧にする5つの手順と、その一覧からAIに任せる仕事を選ぶ方法を解説する記事のアイキャッチ

「業務の見える化と言われても、何から手をつければよいのか」「棚卸しの表を作っても、そのあと何に使うのか」「AIに任せられる仕事が、自分の会社のどこにあるのか分からない」。仕事の中身が担当者の頭の中にしかないと、どこを変えればよいかを話し合う材料がそろいません。

この記事では、自治体や医師会、税理士、上場企業などで5,000人以上にAI研修を行ってきたメイカヒットが、業務の見える化と棚卸しの進め方を解説します。この記事を読むと、仕事を一覧にする5つの手順と、その一覧からAIに任せる仕事を選ぶ方法が分かります。

記事監修者

久保田 亮(株式会社メイカヒット代表)
AI研修 のべ5,000人

久保田 亮|株式会社メイカヒット 代表取締役

【経歴・実績】
・自治体・医師会・税理士法人・上場企業などで、のべ5,000人にAI研修
・某教育委員会でAIコーディネーターとして活動中
・マーケターとして500社以上と取引
・元テレビ局の報道記者(5年)
・AIハッカソンで世界1位の実績あり(事業計画ツールを作成)
・AIとマーケティングが学べるサロン「メイカラ」主宰

目次

業務の見える化とは|棚卸しで仕事を一覧にし、変える場所を決めること

業務の見える化とは、だれが・いつ・どの道具で・どれだけの時間をかけて仕事をしているかを、担当者以外の人にも分かる形にすることです。中身を書き出す作業を「業務の棚卸し」と呼びます。お店の在庫を数えるように、社内の仕事を1つずつ数え上げるからです。

見える化そのものは目的ではありません。一覧ができると、時間がかかっている仕事や、1人しかできない仕事が目に入ります。

業務の見える化のメリットは、次の3つです。

  • 担当者が休んでも、ほかの人が代われる仕事が増える
  • 時間がかかっている仕事が分かり、直す順番を決められる
  • AIや新しい道具に任せる仕事を、思いつきでなく一覧から選べる

一覧があって初めて、手順書を作るかAIに手伝わせるか、やめるかを決められるようになります。

よく似た言葉が3つあるので、違いを表にまとめました。

言葉何をするかできあがるもの
業務の棚卸し今ある仕事を1つずつ書き出す業務の一覧表(棚卸し表)
業務フローの作成1つの仕事の流れを順番に図にする流れの図(フロー図)
マニュアルづくり手順を、ほかの人が同じようにできる形で書く手順書

この記事では、この3つをまとめて「業務の見える化」と呼びます。進める順番は棚卸し、流れの図、手順書です。全部の仕事を図や手順書にする必要はなく、棚卸しで選んだ仕事だけを次に進めます。

業務の見える化が必要な会社の見分け方|5つのチェック

次の5つのうち、2つ以上に当てはまる会社は、AIや新しい道具を入れる前に業務の棚卸しから始めるのが近道です。

  • 担当者が休むと、止まる仕事がある
  • 新しく入った人から、同じ質問を何度も受けている
  • 月末や月初に、特定の人の残業が集中する
  • 手書きの紙を、パソコンに打ち直している
  • 社長が「AIで何かできないか」と思っているが、どの仕事かは決まっていない

当てはまる項目が多いほど、仕事の中身が人の頭の中にあり、外から見えていない状態です。特定の人に仕事が集まる悩みが強いなら、属人化を解消する手順もあわせて読むと、手放す仕事の選び方が分かります。

当社がAI導入を支援する中でも、社員の確認の負担やミスが多い会社では、業務の流れの見える化から始めると決めた例もありました。当社では、道具を先に決めると、今の仕事のどこに当てはめるかが後回しになると考えています。

業務の見える化と棚卸しのやり方|5つの手順

業務の棚卸しは、次の5つの手順で進めます。最初から会社全体を対象にせず、1つの部署の仕事から始めると、最後の手順まで進めやすい大きさです。

業務の棚卸しの5つの手順

・手順1:対象の部署と目的を決める
・手順2:1週間の仕事を書き出してもらう
・手順3:棚卸し表にまとめる
・手順4:時間のかかる仕事の流れを図にする
・手順5:AIに任せる候補を選ぶ

業務の見える化と棚卸しの手順を、対象と目的を決める、1週間の仕事を書き出す、棚卸し表にまとめる、流れを図にする、AIに任せる候補を選ぶ、の5段の階段で示した図

それぞれ見ていきましょう。

手順1:対象の部署と目的を決める

最初に、どの部署の仕事を、何のために書き出すかを1行で決めます。例えば「事務の仕事のうち、AIに手伝わせられるものを見つける」のような書き方です。

目的を社員に先に伝えると、「仕事ぶりを調べられている」という不安を減らせます。評価のための調査ではないと、社長の口から伝えてください。

手順2:1週間の仕事を書き出してもらう

担当者に、ふだんの1週間の仕事を書き出してもらいます。書くのが苦手な人には、話してもらった内容を聞き手がメモにしてもかまいません。

月末だけ、季節ごとだけの仕事は、1週間の書き出しでは出てきません。次の質問で拾ってください。

聞き取りの質問の例
・月曜の朝、出社してから最初にする仕事は何ですか
・月末と月初だけにする仕事はありますか
・季節ごと、年に1回だけの仕事はありますか
・あなたが休んだとき、止まってしまう仕事はどれですか
・同じことを何度も聞かれる質問はありますか
・紙からパソコンへ打ち直している書類はありますか

書き出す仕事の抜けを確かめるときは、公的な見本も参考になります。厚生労働省は、業種や職種ごとに仕事に必要な知識と技能を整理した基準を公開しています。

「職業能力評価基準」とは、仕事をこなすために必要な「知識」と「技術・技能」に加えて、「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」を、業種別、職種・職務別に整理したものです。

出典:厚生労働省|職業能力評価基準(2026年10月27日に確認)

この基準は、業種をまたいだ事務系の職種も対象にしています(※2026年10月現在)。自社の事務の仕事と見比べると、書き忘れた仕事に気づくきっかけになります。

手順3:棚卸し表にまとめる

書き出した仕事は、1行に1つずつ、決まった列の表にまとめてください。表計算ソフトで次の列を作れば、そのまま棚卸し表のひな形として使えます。

列書くこと書き方の例
業務名担当者が見て自分の仕事だと分かる名前作業報告書の打ち直し
担当今している人(複数なら全員)事務のAさん
頻度毎日、毎週、毎月、季節ごと毎週月曜
1回の時間本人が測ったおおよその時間分からなければ「要確認」
道具と書類使うソフト、紙、ファイル手書きの報告書、表計算ソフト
手順書あるか、ないかなし
困っていることミス、待ち時間、1人しかできない字が読めず現場に聞き直す

時間は推測で埋めず、分からないところは「要確認」と書いておいてください。1週間だけ実際に測ってもらうと、話の印象と実際の時間の違いが見えてきます。

手順4:時間のかかる仕事の流れを図にする

棚卸し表の中から、時間がかかる仕事を2〜3個だけ選び、流れを図にします。全部の仕事を図にする必要はありません。

図は、付せんを左から右へ並べる程度で十分です。各工程に「時間がかかる」「ミスが出る」「1人しかできない」の印をつけると、変える場所が絞れます。決まった手順で回る仕事は、AIで業務マニュアルを下書きする方法で手順書にまで進めると、引き継ぎの材料にもなります。

手順5:AIに任せる候補を選ぶ

AIに任せる候補は、「回数が多い」「形が決まっている」「最後に人が確かめられる」の3つがそろった仕事です。棚卸し表の各行を、次の表で見分けてください。

仕事の特徴向いている進め方例
回数が多く、形が決まっているAIに下書きや一覧を出させ、人が確かめる報告書の打ち直し、問い合わせの仕分け
回数が多いが、人の判断が要る判断の材料だけをAIにまとめさせる請求書の金額の確定、発注の数
回数は少ないが、1人しかできないまず手順書にして、ほかの人に共有する年に1回の手続き
そもそも要らないやめる、回数を減らすだれも見ていない報告
棚卸しした仕事を、AIに下書きさせる、判断の材料をまとめさせる、手順書にする、やめる・減らすの4つの進め方に振り分けた図

最初に試す仕事は1つか2つに絞り、お客さまの情報を入れずに試せるものから選びます。入れてよい情報を気にせずに始められるので、社内の決まりづくりを待たずに試せるのが利点です。選んだ仕事を自動化まで進める考え方は、自動化する業務の選び方で解説しています。

業務の棚卸しにAIを使う頼み方と出力の例

聞き取りのメモを棚卸し表に直す作業は、AIに下書きさせられます。人がやると時間がかかるうえ、聞き漏らしに気づきにくい作業です。下の頼み方は、そのまま貼って使える形にしました。

メモの会社と担当者は、説明のために作った架空の例です。当社のお客さまの事例ではありません。

頼み方の例
あなたは、社員20名ほどの会社で、事務の仕事の棚卸しを手伝います。下の【聞き取りのメモ】は、事務担当者に「ふだんの1週間の仕事」を話してもらった内容を、そのまま書き起こしたものです。このメモから、業務の一覧表を作ってください。

【会社の様子】
・設備の工事とメンテナンスをする会社。事務担当は2人(Aさん・Bさん)。
・社長は「事務の仕事のうち、AIに手伝わせられるものを知りたい」と考えている。

【聞き取りのメモ】
Aさん:月曜の朝は、週末に来た問い合わせのメールを見て、工事の担当に振り分けてます。だいたい10件くらいかな。そのあと、先週分の作業報告書を集めて、お客さまごとにまとめてます。報告書は現場の人が手書きで出してくるので、私がパソコンで打ち直してます。あと月末は請求書ですね。見積書と作業報告書を見比べて金額を入れてます。これが一番時間がかかります。電話は1日に何本も来るので、その都度出てメモを残してます。
Bさん:私は、部品の発注と在庫の確認をしてます。在庫は表計算ソフトで管理してるんですけど、現場の人が持ち出しても書いてくれないことがあって、月に1回、倉庫で数えてます。あと、新しく入った人に、社内の決まりを聞かれることが多いです。有給の取り方とか、交通費の出し方とか。決まりは紙のファイルにあるんですけど、どこに何があるかは私しか分からないかもしれません。お客さまへの点検の案内のはがきも、季節ごとに出してます。宛名は前の年のをもとに直してます。

【出してほしいもの】
1. 業務の一覧表(列:業務名/担当/頻度/1回にかかる時間/使う道具や書類/手順書の有無/AIに手伝わせられる部分の候補/人が残す部分)
2. 一覧表を作るうえで、メモからは分からなかったことの質問の一覧(担当者に聞く形で)
3. AIに手伝わせる候補として、最初に試すとよさそうな業務を2つと、その理由

【条件】
・メモに書かれていない数字(時間、件数、頻度)は推測で埋めず、「要確認」と書いて質問の一覧に入れる。
・業務は、メモの言葉どおりに分けすぎず、担当者が見て「自分の仕事だ」と分かる大きさにする。
・お客さまの名前や個人の情報をAIに入れる業務には、そのことを注意として書く。
・最後の判断と確認は人が行う前提で書く。
・です・ます調で、AIに詳しくない人にも分かる言葉で書く。

この頼み方を、前の話の流れがない新しい会話で1回実行した結果の一部が、次の出力です。

出力の例(全8行の一覧表のうち2行、全22問の質問のうち3問、最初に試す業務の1つ目を抜粋)
1. 業務の一覧表(抜粋)
・業務名:作業報告書の打ち直しと、お客さまごとのまとめ
 担当:Aさん/頻度:毎週(月曜。先週分)/1回にかかる時間:要確認
 使う道具や書類:現場の人の手書きの報告書、パソコン(ソフトは要確認)/手順書の有無:要確認
 AIに手伝わせられる部分の候補:手書きの報告書の写真から文字を読み取って、文字にする。お客さまごとに並べ替えて、まとめの下書きを作る
 人が残す部分:読み取った内容が手書きと合っているかの確認。字が読めないところを現場の人に聞く。※お客さまの名前や現場の住所が含まれます
・業務名:新しく入った人からの、社内の決まりについての質問への対応(有給の取り方、交通費の出し方など)
 担当:Bさん/頻度:随時(件数は要確認。「多い」とのこと)/1回にかかる時間:要確認
 使う道具や書類:社内の決まりをまとめた紙のファイル/手順書の有無:なし(どこに何があるかはBさんしか分からないかもしれない、とのこと)
 AIに手伝わせられる部分の候補:紙の決まりを文字にして、聞かれたらAIが該当する箇所を探して答えの案を出す。よくある質問と答えの一覧を作る
 人が残す部分:答えが今の決まりに合っているかの確認。決まりに書かれていない相談への対応。決まりを変えたときの更新

2. メモからは分からなかったことの質問(抜粋)
4. 作業報告書は、1週間に何枚くらい届きますか。打ち直しとまとめに、毎週どのくらいの時間がかかりますか。
6. 請求書づくりには、毎月合計でどのくらいの時間がかかりますか。請求書は毎月何件くらいありますか。
22. お客さまの名前や住所などを、AIに入れてもよいという社内の決まりはありますか。使ってよいAIのサービスは決まっていますか。

3. 最初に試すとよさそうな業務(1つ目)
① 社内の決まりについての質問への対応(Bさん)
・お客さまの情報を入れずに試せます。社内の決まりの文章だけで試せるので、情報の取り扱いの心配が少ないです。
・「Bさんしか分からない」という状態を解消できます。紙の決まりを文字にして整理する作業そのものが、Bさんが休んだり辞めたりしたときの備えになります。

メモにない時間や件数を、AIは「要確認」のまま残しました。推測で埋めない条件を頼み方に入れておくと、作り話の数字が表に混ざりにくくなります。質問の一覧は、そのまま次の聞き取りに使えます。

聞き取りのメモに、お客さまの名前や社員の個人的な事情が入るときは、入れる前に名前を伏せてください。個人情報保護委員会も、2023年6月に生成AIサービスの利用に関する注意喚起を出しています。会社で使うAIの設定と入力してよい情報は、ChatGPTの情報漏洩を防ぐ設定で詳しく解説しました。

業務の見える化でつまずきやすいこと|やらない方がいい4つ

業務の見える化は、進め方を誤ると、表を作って終わることになりがちです。次の4つは避けてください。

やらない方がいいこと

・最初から全社の仕事を書き出す
・棚卸し表を人の評価に使う
・道具を先に買う
・作った表を更新しない

それぞれ見ていきましょう。

最初から全社の仕事を書き出す

全社を一度に対象にすると、書き出しだけで何か月もかかり、途中で止まります。1つの部署で最後まで進め、やり方が固まってからほかの部署へ広げてください。2つ目の部署からは、同じ表と質問をそのまま使えます。

棚卸し表を人の評価に使う

表を評価に使うと、次からは時間を短めに書く人が出てきます。棚卸し表は、仕事の進め方を変えるための材料として扱い、評価とは切り離してください。

道具を先に買う

業務の見える化のためのソフトを先に契約すると、今の仕事のどこに当てはめるかが決まらないまま使われなくなります。まずは表計算ソフトと付せんで棚卸しをし、足りない部分が分かってから道具を選ぶ順番にしてください。

作った表を更新しない

人の入れ替わりやAIに任せた仕事が出るたびに、棚卸し表の中身は変わっていきます。表が古くならないよう、半年に1回など、見直す時期を先に決めておいてください。特定の人がいなくても回る会社の作り方は、仕組み化の5つの部品と進め方にまとめています。

業務の見える化に関するよくある質問

業務の見える化と可視化は、違うものですか?

ほぼ同じ意味の言葉です。どちらも、仕事の中身や流れを担当者以外にも分かる形にする取り組みです。

業務の棚卸しは、エクセルで作れますか?

作れます。業務名・担当・頻度・1回の時間・道具と書類・手順書の有無・困っていることの列を作れば、棚卸し表として十分に使えます。

業務の見える化のデメリットはありますか?

書き出しに担当者の時間がかかり、進め方によっては「監視されている」と受け取られることです。目的を先に伝え、1つの部署から小さく始めると、負担と不安を抑えられます。

棚卸しをしたら、すぐにAIを入れるべきですか?

すぐに全部を任せる必要はありません。回数が多く形が決まっている仕事を1つか2つ選び、AIに下書きをさせて人が確かめる形で試すのが安全です。中小企業で最初に任せる業務の選び方は、中小企業のAI導入の進め方で解説した内容も参考にしてください。

社員が少ない会社でも、業務の見える化は必要ですか?

社員が少ない会社ほど、1人が休むと止まる仕事が出やすいため、書き出しておく意味があります。数人の会社なら、1人ずつ1週間の仕事を話してもらうだけでも、一覧の形になります。

まとめ|業務の見える化は、1週間の書き出しから始めよう

  • 業務の見える化は、棚卸しで仕事を一覧にし、変える場所を決めるための準備
  • 1つの部署から、目的を決める、書き出す、表にする、図にする、候補を選ぶの順で進める
  • AIに任せる候補は、回数が多く、形が決まっていて、人が最後に確かめられる仕事
  • 聞き取りのメモを棚卸し表にする作業も、推測で埋めない条件をつければAIに下書きさせられる

まずは今週、1つの部署の担当者に、ふだんの1週間の仕事を書き出してもらってください。

自分の会社ではどの仕事から始めればよいか、次の案内も参考にしてください。

AI研修・AI経営顧問|AIの使い方と社内のルールづくりを一緒に考えます(お問い合わせフォームへ)

メイカヒットでは、企業向けのAI研修と、AI経営顧問を行っています。

  • AI研修:社員の方が安全にAIを使えるよう、入力してよい情報の決め方や設定の確かめ方まで、実際の画面で操作しながら学びます。これまでに5,000人以上が受講し、自治体や医師会、税理士、上場企業などでも研修を行っています。研修の内容を見る
  • AI経営顧問:営業・事務・採用・社内の質問への回答など、会社の業務のうちAIに任せられる部分を、会社の仕組みとして作ってお渡しし、社員の方が使えるようになるまで一緒に進めます。

「うちの会社の場合はどう進めればよいか」といったご相談も、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。お問い合わせ種別は「AI導入・研修」を選んでください。

目次