「仕組み化と言われても、何から手をつければよいのか」「マニュアルを作れば仕組み化になるのか」「AIは仕組み化のどこで使えるのか」。仕組み化は意味の広い言葉で、例として大きな会社の話が多く出るため、小さな会社では自社に当てはめにくいテーマです。
この記事では、自治体や医師会、税理士、上場企業などで5,000人以上にAI研修を行ってきたメイカヒットが、小さな会社の仕組み化の進め方を解説します。この記事を読むと、仕組みをつくる5つの部品と6つの手順、AIに任せられる作業が分かります。
記事監修者

久保田 亮-株式会社メイカヒット代表
【経歴・実績】
・5,000人以上へのAI研修実績
・自治体・医師会・税理士・上場企業などで研修多数
・マーケターとしての取引企業500社以上
・マーケティング/広報顧問累計6社
・自社メディアでの販売実績10億円以上
・Webスクールメイカラ主宰
田中 凌平-株式会社メイカヒット代表
【経歴・実績】
・Notta公式アンバサダー
・AIを活用し生産性300%向上
・日本インタビュー協会認定インタビュアー
・年間150名以上の取材実績
・ラグジュアリーブランドで5年勤務

仕組み化とは、特定の人がいなくても仕事が同じように回る形をつくること
仕組み化とは、だれが担当しても同じ結果になるように、仕事の進め方を会社に残す取り組みです。残すのは手順だけでなく、判断の基準・記録・担当と代わり・見直しを合わせた5つの部品です。

反対の状態は、属人化(その人にしか分からない仕事がある状態)と呼ばれています。担当者が休むと止まる仕事や、人によって出来が違う仕事は、仕組みがないところで生まれがちです。
仕組み化に近い言葉に、標準化・マニュアル化・ルール化・自動化があります。どれも仕組み化の一部を指す言葉で、違いは次の表のとおりです。
| 言葉 | 意味 | 仕組み化との関係 |
|---|---|---|
| 標準化 | 仕事のやり方を1つにそろえる | 仕組みの土台になる |
| マニュアル化 | そろえたやり方を文書(マニュアル)に残す | 5つの部品のうち「手順」に当たる |
| ルール化 | 「〜のときは〜する」という決まりを作る | 5つの部品のうち「判断の基準」に当たる |
| 自動化 | 決まった作業を道具やソフトに任せる | 仕組みができた仕事の一部を、道具に移す |
マニュアルを作っただけでは、仕組み化は終わりません。当社では、担当と見直しまで決めて初めて、人が替わっても回る形になると考えています。
社長に仕事が集まっている悩みは、社長の仕事を1つずつ手放す属人化の解消の手順で詳しく解説しています。道具に任せる範囲の選び方は、業務自動化の進め方もあわせてご覧ください。
仕組み化が必要な仕事に当てはまる8つのサイン
自社のどの仕事から仕組み化するかは、次の8つで見分けられます。1つの仕事について当てはまる数が多いほど、仕組み化を先に進める候補になります。
- 担当者が休むと、その仕事が止まる
- 同じ質問が、いつも同じ人に来る
- 人によって、仕上がりや返事の早さが違う
- 新しい人に教えるたびに、説明の中身が変わる
- どこまで終えたかが、担当者の頭の中や手元のノートにしかない
- 「急ぎ」「いつもどおり」の意味が、人によって違う
- 同じミスや連絡の漏れが、1年に何度も起きる
- 仕事のやり方を最後に見直した時期が、だれにも分からない
中小企業庁の2025年版中小企業白書では、業務の属人化・ブラックボックス化(中身が外から見えない状態)の防止に取り組む事業者は51.5%で、ほぼ半数でした(2024年度の調査)。
同じ白書では、2018年から2023年にかけて、付加価値額(会社が新しく生み出した額)がどれだけ伸びたかも比べています。真ん中に当たる会社の値で見た伸び率は、この防止に取り組む事業者で11.4%、取り組んでいない事業者で5.9%でした。
この差は、取り組んだから伸びたという原因までを示すものではありません。それでも仕組み化は、人が辞めたときの備えだけでなく、会社の伸びとも関係のある取り組みです。
仕組み化で決める5つの部品
仕組み化で決めるものは、手順・判断の基準・記録・担当と代わり・見直しの5つです。1つでも欠けると、担当者が替わった日にどこかで仕事が止まります。
| 部品 | 決めること | 欠けたときに起きること |
|---|---|---|
| 手順 | 作業の順番と、1つずつの作業の中身 | 人によって抜ける作業が出る |
| 判断の基準 | 「〜のときは〜する」という決まり | 迷うたびにベテランに聞くことになる |
| 記録 | 何を、どこに残すか | どこまで終えたかが本人にしか分からない |
| 担当と代わり | だれが担当し、休んだ日はだれが代わるか | 休みの日に仕事が止まる |
| 見直し | いつ、だれが、何を見て直すか | 決めたやり方が古くなり、使われなくなる |
5つの部品のうち、当社が抜けやすいと見ているのは、判断の基準と見直しです。判断の基準がない手順書では、迷う場面で結局ベテランに聞くことになり、属人化が残ります。
手順を文書にまとめる方法を知りたい方は、業務マニュアルをAIで下書きして現場で直す方法もご覧ください。
仕組み化の進め方|1つの仕事から始める6つの手順
仕組み化は、すべての仕事を一度に変えるより、1つの仕事で形を作ってから広げる方が続きます。進め方を、次の6つの手順で解説します。
・手順1:仕事を書き出し、止まると困る順に並べる
・手順2:最初に仕組み化する1つを選ぶ
・手順3:今のやり方を担当者から聞き取る
・手順4:5つの部品に分けて、1枚のシートにまとめる
・手順5:担当者以外の人が1回やってみる
・手順6:見直しの日と担当を決める
それぞれ見ていきましょう。
手順1:仕事を書き出し、止まると困る順に並べる
最初に、部署やチームの仕事を1行に1つずつ書き出します。並べる順番は、担当者が休んだときに困る順です。ここでは細かく分けず、仕事の名前と担当者が分かれば十分です。
中小企業庁の2026年版中小企業白書は、多能工化・兼務化(1人が複数の仕事を担えるようにすること)に取り組む事業者に、役に立った取り組みを聞いています(2025年度の調査。回答した6,096事業者・複数回答)。
最も多かった答えは従業員スキルの可視化で、41.3%でした。業務マニュアルの作成・整備が34.2%、研修・勉強会等の実施が29.0%と続き、業務の棚卸し・可視化(仕事を洗い出して見える形にすること)も24.0%ありました。だれが何をできるかの書き出しは、仕組み化の入口に当たる作業です。
手順2:最初に仕組み化する1つを選ぶ
最初の1つは、手順1の一覧の上の方から選びます。迷ったときは、毎週くり返す仕事のうち、担当が1人でお客さまに関わるものを先にしてください。
採用の合否や値引きの判断のように、その都度の判断が大きい仕事と、年に数回しかない仕事は後回しにします。判断が大きい仕事は決まりに落としにくく、くり返しの少ない仕事は決まりを作っても使う場面が少ないからです。
手順3:今のやり方を担当者から聞き取る
選んだ仕事のやり方を、担当者から聞き取ります。実際の画面や書類を見せてもらいながら、「迷ったときはどうしているか」まで聞いてください。
聞いた内容は、きれいにまとめずに箇条書きのメモで残します。このメモは、次の手順4で5つの部品に分けて整理するための材料です。
手順4:5つの部品に分けて、1枚のシートにまとめる
聞き取りのメモを、5つの部品に分けて1枚のシートにまとめます。メモから決められない項目は空けずに「未定」と書き、だれに聞くかを添えてください。そのまま使える形を載せます。
仕組みのシート(ひな形)
仕事の名前:〔 〕
1. 手順:〔番号つきで、1つの手順に1つの作業〕
2. 判断の基準:〔〜のときは〜する〕
3. 記録:〔何を、どこに残すか〕
4. 担当と代わり:〔担当者/休んだ日に代わる人〕
5. 見直し:〔いつ/だれが/何を見て直すか〕
未定のこと:〔だれに、いつまでに聞くか〕
シートは、社内のだれでも開ける共有の場所に保存します。担当者のパソコンの中だけにあると、そのシート自体が属人化してしまうからです。
手順5:担当者以外の人が1回やってみる
シートができたら、担当者以外の人がシートだけを見て、その仕事を1回やってみます。詰まったところが、シートに書けていない部分です。
担当者は横で見守り、口で補った説明をシートに書き足します。この試しを1回入れると、書いた本人には見えない抜けを見つけやすくなります。
手順6:見直しの日と担当を決める
最後に決めるのは、シートを見直す日と見直す人です。見直しの日は、カレンダーに予定として入れてください。予定にしないと、見直しは後回しになりがちです。
見直しでは、ミスや問い合わせの記録を見て、手順と判断の基準を直します。最初の見直しの日は、使い始める日に一緒に決めてください。
仕組み化でAIに任せられる作業と、人が決めること
仕組み化の中でAIに任せやすいのは、聞き取りのメモを整理する、手順の文を読みやすくするといった文書の下書きです。どのやり方を会社の決まりにするかは、人が決めます。

2026年版中小企業白書のAIを扱った節は、人手を減らすための投資(省力化投資)でAIを使った事業者に、その目的を聞いています(2025年度の調査。回答した1,685事業者・複数回答)。業務時間の節減が84.5%、人手不足の解消が40.5%、業務の属人化解消が40.1%でした。
同じ節では、省力化投資に取り組んだもののAIを業務で使っていない事業者に、その理由も聞いています(回答した事業者は3,888)。最も多かったのは「活用する業務がイメージできていない」で、63.4%でした。そこで、仕組み化の作業ごとに、AIに任せられることを表にまとめます。
| 作業 | AIに任せられること | 人が決めること |
|---|---|---|
| 聞き取りの整理 | メモを5つの部品に分けた下書き | 下書きが実際のやり方と合っているか |
| 手順の文 | 入ったばかりの社員が読める言葉に直す | どこまでを決まりにするか |
| 判断の基準 | 過去のやり取りから「〜のときは〜」の候補を出す | その基準で会社として良いか |
| 社内の質問 | シートをもとに答えの下書きを作る | 答えの最終の確認 |
| 見直し | ミスの記録から直す場所の候補を出す | 直すかどうか |
表のとおり、AIが受け持つのは下書きと候補出しまでです。会社としてどう決めるかを人が引き受けると、AIに任せる範囲がはっきりします。
シートをもとに社内の質問に答える形は、社内の同じ質問にAIが答える仕組みの作り方で紹介しています。
頼み方の例:聞き取りのメモを5つの部品に整理する
手順4のシートの下書きを、AIに作らせる頼み方です。メモに書いていない内容を推測で足させず、決められない点は質問の形で出させてください。下の聞き取りメモは、説明のために作った架空の例です。当社のお客さまの事例ではありません。
頼み方の例
下の【聞き取りメモ】は、ある仕事をいつも1人で担当している社員から聞いた話です。この仕事を、ほかの社員でも同じように回せる形にしたいので、次の5つに分けて整理してください。
【出してほしいもの】
1. 手順:番号つきで、1つの手順に1つの作業。
2. 判断の基準:担当者がその場で決めていることを「〜のときは〜する」の形で。
3. 記録:何を、どこに残すか。
4. 担当と代わり:だれが担当し、休んだときはだれが代わるか。
5. 見直し:いつ、だれが、何を見て直すか。
最後に、メモだけでは決められないことを、担当者に聞く質問の形で並べてください(5つまで)。
【条件】
・【聞き取りメモ】に書いてあることだけを使う。書いていない作業・数字・名前を推測で足さない。
・メモから決められない項目は空けずに「未定(質問○へ)」と書く。
・専門の言葉は使わず、入ったばかりの社員がそのまま読める言葉で書く。
【聞き取りメモ】
・仕事:ホームページの問い合わせフォームから来た見積もりの依頼への対応。担当は事務のAさん。
・毎朝9時と午後2時にメールを見る。
・依頼の中身を読んで、工事の種類が「修理」なら現場担当のBさんに、「新しく取り付け」なら営業のCさんに回す。どちらか分からないときはAさんが電話で聞く。
・回すときは、社内のチャットに依頼のメールを貼り、「○日までに見積もりをお願いします」と書く。期限は、急ぎと書いてあれば翌日、それ以外は3日後。
・お客さまには、その日のうちに「受け付けました。○日ごろまでにご連絡します」と返信する。返信の文はAさんのパソコンのメモ帳にある。
・見積もりを送ったかどうかは、Aさんが手元のノートに書いている。
・Aさんが休んだ日は、だれも見ていないことがある。
・去年、返信を忘れて、お客さまから電話で催促されたことが2回あった。
この頼み方を、前の話の流れがない新しい会話で1回だけ実行しました。次の出力の例は、5つの部品のうち「判断の基準」7行から5行と「担当と代わり」3行から2行、担当者に聞く質問5つから2つを文言を変えずに抜き出したものです。
出力の例
【2. 判断の基準】
・工事の種類が「修理」のときは、現場担当のBさんに回す。
・工事の種類が「新しく取り付け」のときは、営業のCさんに回す。
・依頼に「急ぎ」と書いてあるときは、見積もりの期限を翌日にする。
・「急ぎ」と書いていないときは、見積もりの期限を3日後にする。
・お客さまに伝える「○日ごろ」の日をどう決めるかは、未定(質問3へ)。
【4. 担当と代わり】
・担当:事務のAさん
・Aさんが休んだときの代わり:未定(質問1へ)。今は、Aさんが休んだ日はだれもメールを見ていないことがある。
【担当者(Aさん)に聞くこと】
1. Aさんが休んだ日は、だれがメールを見て、BさんやCさんに回し、お客さまに返信しますか。返信の文が入っているメモ帳は、その人も使えますか。
3. お客さまに伝える「○日ごろ」は、どう決めていますか。BさんやCさんに頼んだ期限と同じ日ですか。また、「3日後」や「翌日」に、お休みの日(土日など)は数えますか。
メモに書いていない代わりの人を、AIは自分で決めずに「未定」とし、担当者への質問に回しました。出力の全体では、見直しの日も同じく「未定」でした。メモの中では決まっていない「○日ごろ」の決め方も、質問として拾っています。この質問に答えていくと、手順4のシートの空欄が埋まります。
AIに渡すメモからは、お客さまの名前や連絡先、社員の個人の事情を消してから入れてください。入力してよい情報の決め方は、社内でAIを使うときの決まりの作り方にまとめています。
仕組み化でつまずきやすい4つのこと
仕組み化が途中で止まるときの原因は、当社の見方では次の4つのどれかです。
- すべての仕事を一度に仕組みにしようとする:作る量が多すぎて、どれも途中で止まる
- 担当者を抜きに上で決める:現場のやり方と合わず、シートが使われない
- 作って終わりにする:見直しの担当がいないと、時間がたつうちに古いやり方の文書になる
- 道具を先に選ぶ:やり方が決まっていない仕事を道具に乗せると、混乱も一緒に移る
どれも、手順2の「1つから始める」と、手順6の「見直しを予定に入れる」で防げます。道具を入れるのは、シートどおりに人が回せるようになってからで間に合います。
仕組み化に関するよくある質問
まとめ:仕組み化は1つの仕事のシートから始めよう
- 仕組み化とは、だれが担当しても同じ結果になる形を会社に残す取り組み
- 仕組みは、手順・判断の基準・記録・担当と代わり・見直しの5つの部品でできている
- 進め方は6つの手順で、1つの仕事から形を作り、見直しの日を予定に入れる
- AIに任せられるのは、聞き取りの整理や手順の文などの下書きまでで、決めるのは人
まずは、担当者が休んだら止まる仕事を1つ選び、5つの部品のうち決まっていないものに印をつけてください。
自分の会社ではどの仕事から始めればよいか、次の案内も参考にしてください。

メイカヒットでは、企業向けのAI研修と、AI経営顧問を行っています。
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