「マニュアルを作りたいが、書く時間が取れない」「AIに頼めば作れると聞いたが、何を渡せばいいのか分からない」「作っても、現場で読まれずに古くなるのでは」。マニュアル作成が進まないのは、仕事を一番よく知る人ほど忙しく、白紙から書く時間を取れないからです。
この記事では、自治体や医師会、税理士、上場企業などで5,000人以上にAI研修を行ってきたメイカヒットが、マニュアル作成をAIで進める方法を解説します。頼み方と出力の例は、そのまま使える形で載せました。この記事を読むと、AIに任せる部分と人が残す部分、作ったあとに現場で直して使い続ける手順が分かります。
記事監修者

久保田 亮-株式会社メイカヒット代表
【経歴・実績】
・5,000人以上へのAI研修実績
・自治体・医師会・税理士・上場企業などで研修多数
・マーケターとしての取引企業500社以上
・マーケティング/広報顧問累計6社
・自社メディアでの販売実績10億円以上
・Webスクールメイカラ主宰
田中 凌平-株式会社メイカヒット代表
【経歴・実績】
・Notta公式アンバサダー
・AIを活用し生産性300%向上
・日本インタビュー協会認定インタビュアー
・年間150名以上の取材実績
・ラグジュアリーブランドで5年勤務

マニュアル作成でAIに任せられるのは、下書きと抜けの洗い出し
マニュアル作成でAIに任せられるのは、担当者が話した内容を手順の形に整える下書きと、足りない情報の洗い出しです。生成AI(文章や画像を作るAI)は、話し言葉のメモを番号つきの手順や表に並べ直す作業を得意としています。
いっぽうで、AIは自社の仕事のやり方を知りません。材料を渡さずに「見積書のマニュアルを作って」と頼むと、どの会社にも当てはまる一般的な手順が返ってきます。仕事を知っている人が話し、AIが整えて人が確かめるという分担にすれば、白紙から書く時間を減らせます。

工程ごとの分担は、次の表のとおりです。
| 工程 | AIに任せる部分 | 人が残す部分 |
|---|---|---|
| 材料を集める | 録音した説明を文字にする(文字起こし) | どの業務を作るかを決め、担当者が手順を話す |
| 下書きを作る | 手順、判断に迷うところ、よくあるまちがいの形に整える | AIに渡してよい情報かを確かめる |
| 抜けを見つける | あいまいな説明を、担当者への質問として並べる | 質問に答え、判断の基準を決める |
| 仕上げる | 言葉づかいをそろえ、読む人に合わせて書き直す | 下書きだけで作業できるかを試し、中身に責任を持つ |
マニュアル作成に使うAIツールは、3つの種類から選ぶ
マニュアル作成に使うAIツールは、「文章を作る生成AI・録音を文字にするツール・マニュアル作成の専用ツール」の3種類に分かれます。文章のマニュアルなら、会社ですでに使っているChatGPTやCopilotなどの生成AIで作れます。新しく契約する前に、今あるツールで1つ作ってみてください。
| 種類 | できること | 向いている業務 |
|---|---|---|
| 文章を作る生成AI(ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeなど) | メモや文字起こしから、手順の下書きと質問の一覧を作る | 事務や営業など、言葉で説明できる業務 |
| 録音を文字にするツール | 担当者が話した説明を文字にする | 口頭で教えている業務 |
| マニュアル作成の専用ツール(ManualForce、Teachme Bizなど) | パソコンの操作の記録や動画などの素材から、手順を自動で作る | ソフトへの入力など、画面の操作が中心の業務 |
専用ツールの名前は例で、機能は2026年10月現在の各社の公式サイトで確かめたものです。順位や優劣を示すものではありません。
手を動かす作業や機械の操作は、文章より写真や動画のほうが伝わります。2026年版中小企業白書には、すべての業務に動画のマニュアルを整え、新任者でも動画を見れば1人で対応できるようにした旅館の例が載っています。
どの種類を使う場合も、文章の下書きと質問出しは生成AIで十分です。ツールの数を増やすより、1つの業務を最後まで仕上げるほうを先にしてください。
業務マニュアルが作られない3つの理由と、自社のチェックリスト
業務マニュアルが作られない理由は、「書く人の時間・書き方・作ったあとの扱い」の3つに分けられます。やり方を人の頭の中から出す取組は、小さな会社ほど進んでいません。2025年版中小企業白書では、業務の属人化(特定の人しかやり方を知らない状態)の防止に取り組んでいる事業者は、従業員30名以下で46.0%でした。
1つ目は、仕事を一番よく知る人ほど忙しく、書く時間を取れないためです。2つ目は書き方で、どこまで細かく書くかが決まっておらず、書き始めても手が止まります。3つ目は作ったあとの扱いで、直す担当が決まっていないマニュアルは、古くなって読まれなくなるからです。
3つの理由に当てはまるかは、次の項目で確かめられます。上の2つは書く人の時間と書き方、3つ目は作ったあとの扱いです。4つ目と5つ目は、マニュアルがないまま仕事を続けたときに起きる状態にあたります。
- 仕事を一番よく知る人が忙しく、書く時間を取れない
- 書き始めても、どこまで細かく書けばよいか分からずに止まる
- 前に作ったマニュアルが、今のやり方と合っていない
- 教えるときは口頭で、同じ説明を何度もしている
- 担当者が休むと、その仕事が止まる
当てはまる項目が多いなら、AIで下書きを作る方法に向いた会社です。
マニュアルの整備は、国の白書でも有効な取組に挙がっています。先ほどの2026年版中小企業白書では、1人が複数の仕事を受け持つ多能工化・兼務化に取り組む事業者に、有効だった取組を聞きました。「従業員スキルの可視化」が41.3%で一番多く、「業務マニュアルの作成・整備」は34.2%で2番目です(複数回答)。
特定の人に仕事が集まる状態そのものを見直したい方は、属人化を解消する手順で詳しく解説しています。手放す仕事の選び方も確認できますので、あわせてご覧ください。
AIを使ったマニュアル作成の5つの手順
AIを使ったマニュアル作成は、業務を1つ選ぶところから始めます。書く作業はAIに任せ、人は「話す・確かめる・直す」の3つに時間を使ってください。
マニュアル作成の進め方を、次の5つの手順で解説します。
・最初に作る業務を1つ選ぶ
・担当者に話してもらい、文字にする
・AIに下書きを頼む
・仕事を知らない人が、下書きだけで作業してみる
・保存する場所と、直す担当を決める
それぞれ見ていきましょう。
手順1:最初に作る業務を1つ選ぶ
最初に作るのは、回数が多く、担当者が1人しかいない業務です。すべての業務を一度に作ろうとすると、途中で止まってしまいます。1つ作り、現場で使えると分かってから次の業務に広げる順番が確実です。
| 選ぶ目安 | 業務の例 |
|---|---|
| 回数が多い | 毎日や毎週ある見積書の作成、受注の入力、請求書の発行 |
| 担当者が1人だけ | その人が休むと止まる仕事 |
| 新人が最初に覚える | 電話の受け方、書類の保存のしかた |
| 手順が決まっている | 判断より作業が中心の仕事 |
手順2:担当者に話してもらい、文字にする
材料は、書いてもらうより話してもらうほうが早く集まります。担当者に実際の画面や書類を見せてもらいながら、次の質問を順に聞いてください。録音して文字起こしのツールにかけると、話した内容がそのまま材料になります。
担当者に聞く質問のひな形
・この仕事は、何がきっかけで始まりますか
・最初に何を開き、何を見ますか
・そのあと、どの順で何をしますか
・迷うのはどんなときで、だれに聞きますか
・新人がよくまちがえるのはどこですか
・終わったあと、どこに何を記録しますか
録音を文字にする道具を知りたい方は、AI議事録ツールの紹介記事で詳しく解説しています。お客さまの名前や金額は、録音のときから「A社」「◯円」と言いかえて話してもらってください。実際の名前が入った録音は、会社で使うと決めたツールだけで文字にしてください。
手順3:AIに下書きを頼む
文字にした材料をAIに渡し、マニュアルの形を指定して下書きを頼みます。形は「目的、用意するもの、手順、判断に迷うところ、よくあるまちがい」の5つにすると、新人が読む順にそろいます。
頼むときは、材料にない内容を推測で書き足さないよう条件をつけてください。頼み方の全文と実際に出た下書きは、次の章に載せました。
手順4:仕事を知らない人が、下書きだけで作業してみる
下書きができたら、その仕事をしたことがない人に、下書きだけを見て作業してもらいます。担当者が読み返しても、頭の中で補ってしまい、抜けに気づきにくいからです。
手が止まった場所と、担当者に質問した内容を書きとめてください。止まった場所が、マニュアルに足りない情報です。その日のうちに下書きへ足せば、次に読む人は同じ場所で止まりません。
手順5:保存する場所と、直す担当を決める
マニュアルは、作った日から古くなり始めます。保存する場所を1か所に決め、業務ごとに直す担当を1人決めてください。「手順が変わったら、その週のうちに直す」のように期限まで決めると、古い版が残りにくくなります。
作りやすい仕組みがあると、マニュアルは増えやすくなります。2026年版中小企業白書の事例では、従業員85名の金属製品製造業の会社が、AIを使った手順書の管理システムを自社で作りました。150件ほどだった手順書は、導入後の4か月で240件ほど増えたと紹介されています。
当社がAI導入を支援する中では、できたマニュアルをAIに読み込ませ、社内の質問に答える窓口として使う形も作っています。AIが答えられなかった質問を記録し、答えをマニュアルに足していく運用です。社内の質問にAIが答える仕組みは、社内チャットボットの導入ガイドで確認できます。
マニュアル作成をAIに頼むときの頼み方(プロンプト)と出力の例
ここでは、手順3で使う頼み方(プロンプト=AIへの指示の文)と、それで実際に出た下書きを紹介します。材料の「担当者の説明メモ」は、説明のために作った架空の例です。当社のお客さまの事例ではありません。
頼み方の例
あなたは、社員20名ほどの会社で、業務マニュアルの下書きを作る手伝いをします。
下の【担当者の説明メモ】をもとに、新人が1人で作業できるマニュアルの下書きを作ってください。
【マニュアルの名前】見積書の作成と送付
【読む人】入社1か月の事務の社員。業界の言葉はまだ分からない。
【担当者の説明メモ】(担当者が話した内容を、そのまま文字にしたもの)
・お客さんからメールか電話で見積の依頼が来る。電話のときはメモを取って、依頼の内容を共有フォルダの「見積依頼」に入れておく
・見積は販売管理ソフトで作る。前に同じお客さんに出した見積があれば、それをコピーして直すのが早い
・単価は価格表を見る。ただ、古いお客さんは特別単価のことがあるから、そこは気をつけて
・数量が多いときは値引きすることもある。そのへんは部長に聞いて
・できたらPDFにしてメールで送る。送る前に部長に見てもらう。急ぎのときは口頭でOKをもらうこともある
・送ったら、見積の一覧表に日付と金額を書いておく。1週間たって返事が無かったら電話する
【形】
1. このマニュアルの目的(1〜2文)
2. 用意するもの
3. 手順(番号つき。1つの手順に1つの動作。だれが・何を見て・何をするかを書く)
4. 判断に迷うところ(「こういうときは、だれに聞く」の形)
5. よくあるまちがい
【条件】
・メモに無いことを推測で書き足さない。足りない情報は、最後に「担当者に確かめること」として質問の形で並べる。
・「気をつけて」「そのへん」のようなあいまいな言い方は、そのまま手順にせず、確かめる質問に回す。
・1文は短く、新人が読んで分かる言葉で書く。
この頼み方の要は、最後の【条件】の2行です。「気をつけて」「そのへん」のようなあいまいな説明は、担当者の頭の中にだけある判断の基準を指しています。AIに推測で埋めさせず、質問として出させると、マニュアルに書く中身が見えてきます。
この頼み方を新しい会話で1回実行すると、全18手順の下書きと、担当者に確かめる20個の質問が出ました。次は、その一部です。
出力の例(全18手順のうち9〜12と、「担当者に確かめること」20問のうち1〜6を抜粋)
9. あなたは価格表を見て、単価を見積に入れます。
10. 古いお客さんのときは、単価が価格表とちがう「特別単価」のことがあります。当てはまるか分からないときは、4の「判断に迷うところ」を見ます。
11. 数量が多いときは、あなたは値引きをするかどうかを部長に聞きます。
12. 部長が値引きをすると言ったときは、あなたは部長の指示のとおりに見積を直します。
担当者に確かめること
特別単価について(メモの「気をつけて」の中身)
1. 「古いお客さん」とは、どのお客さんですか。名前の一覧はありますか。
2. 特別単価は、どこを見れば分かりますか。
3. 特別単価かどうか分からないときは、だれに聞きますか。
値引きについて(メモの「そのへん」の中身)
4. 「数量が多い」とは、いくつからですか。品物ごとに決まりはありますか。
5. 部長に聞くのは、見積を作る前ですか。作ったあとですか。
6. 部長がいないときは、だれに聞きますか。
メモの「気をつけて」と「そのへん」は、特別単価と値引きについての6つの質問に変わりました。担当者がこの質問に答え、答えを下書きに足すと、新人が1人で判断できるマニュアルに近づきます。

AIを使ってうまくできた作業があれば、その会話の最後に「いまの進め方を次も同じようにできる手順書にして」と頼む方法も、当社では勧めています。作業の直後なら、材料を集め直す手間がかかりません。
AIでのマニュアル作成でつまずくところと、やらないほうがいいこと
AIでのマニュアル作成は、下書きが早くできるぶん、確かめる工程を飛ばしやすくなります。つまずきやすいところを、次の3つの観点から解説します。
・お客さまの個人情報を、そのままAIに入れる
・AIの下書きを、確かめずに配る
・最初から見た目を整えすぎる
それぞれ見ていきましょう。
お客さまの個人情報を、そのままAIに入れる
マニュアルの材料に、お客さまの名前や連絡先をそのまま入れるのは避けてください。個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)は、個人情報を含む内容を生成AIに入力する事業者に、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認するよう求めています。同じ注意喚起は、入力した個人データがAIの学習に使われないかの確認も事業者に求めました。
マニュアルに要るのは手順で、実在のお客さまの情報ではありません。名前や金額は「A社」「◯円」に書きかえてから渡す形で足ります。入力してよい情報の決め方を知りたい方は、生成AIガイドラインの作り方で詳しく解説しています。
AIの下書きを、確かめずに配る
AIの下書きは、担当者が確かめる前に配らないでください。AIは、材料にない手順をもっともらしく書き足すことがあります(ハルシネーション)。条件をつけて頼んでも、0にはなりません。
配る前に担当者が1行ずつ読み、手順4の試しを通すのが決まりです。まちがいを減らす頼み方は、ハルシネーション対策の記事にまとめました。
最初から見た目を整えすぎる
体裁や図を整えるのは、手順4で中身が固まってからにします。先に見た目を作りこむと、直すたびに手間がかかり、更新が止まりやすくなるからです。最初は文字だけの1ページで十分です。
マニュアル作成 AIに関するよくある質問
まとめ
- マニュアル作成でAIに任せられるのは、話した内容を手順に整える下書きと、抜けの洗い出し
- 進め方は、業務を1つ選ぶ、担当者が話す、AIに下書きを頼む、仕事を知らない人が下書きだけで作業してみる、直す担当を決める、の5つ
- 頼むときは、推測で書き足さず、あいまいな説明は質問として出すよう条件をつける
- お客さまの個人情報は伏せて渡し、AIの下書きは担当者が確かめてから配る
まずは、回数が多く担当者が1人だけの業務を1つ選び、担当者に手順を話してもらうところから始めてください。
自分の会社ではどの業務から始めればよいか、次の案内も参考にしてください。

メイカヒットでは、企業向けのAI研修と、AI経営顧問を行っています。
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