「AIエージェントを入れたいが、どの仕事から任せればよいのか」「勝手にメールを送ったり、お金を動かしたりしないか」「チャットのAIと何が違うのか」。AIエージェントは自分で手順を考えて動くぶん、任せる範囲を先に決めないと不安が残るものです。
この記事では、自治体や医師会、税理士、上場企業などで5,000人以上にAI研修を行ってきたメイカヒットが、中小企業のAIエージェントの導入を解説します。この記事を読むと、最初に任せる業務の選び方と、2週間で試す進め方が分かります。
記事監修者

久保田 亮|株式会社メイカヒット 代表取締役
【経歴・実績】
・自治体・医師会・税理士法人・上場企業などで、のべ5,000人にAI研修
・某教育委員会でAIコーディネーターとして活動中
・マーケターとして500社以上と取引
・元テレビ局の報道記者(5年)
・AIハッカソンで世界1位の実績あり(事業計画ツールを作成)
・AIとマーケティングが学べるサロン「メイカラ」主宰
AIエージェントの導入とは|チャットのAIとの違いと最初にすること
AIエージェントは、目的を伝えると、調べる・読む・まとめるといった手順をAIが自分で組み立てて進める仕組みです。総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)では、次のように定めています。
本ガイドラインにおけるAIエージェントとは、特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステムとする。
出典:総務省・経済産業省|AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編の用語の定義(2026年3月31日公表、2026年10月24日に確認)
チャットのAIでは、人が1回ずつ頼み、返ってきた答えを次の作業に使うのは人でした。AIエージェントは、いくつもの手順をまとめて引き受けるところが違います。
| 比べること | チャットのAI | AIエージェント |
|---|---|---|
| 手順を決めるのは | 人(1回ずつ頼む) | AI(目的から手順を組む) |
| 1回で進む作業 | 文章の下書きや要約など1つ | 調べる・まとめる・書類にするなど複数 |
| 人がすること | 答えを読んで次を頼む | 任せる範囲を決め、最後に確かめる |
中小企業の導入は、社外に出ずお金も動かない仕事を1つ選び、最初と最後を人が持つ形で2週間試すところから始めます。道具を選ぶのは、任せる仕事が決まってからで十分です。
AIの導入の全体の流れや費用の考え方は、AI導入の進め方の記事にまとめています。この記事は、AIエージェントに仕事を任せる場面に絞った内容です。
中小企業のAI導入の今|任せる業務が思い浮かばない会社が多い
中小企業でも生成AIを使う方針の会社は増えていますが、大企業との差はまだあります。総務省が出した令和8年版情報通信白書では、会社で働く人に自社の生成AIの方針を尋ねています。「積極的に活用する方針」か「活用する領域を限定して利用する方針」と答えた割合は、大企業で74.0%、中小企業では58.1%にとどまりました。
使っていない会社の理由も分かっています。中小企業庁の2026年版中小企業白書では、AIに取り組んでいる事業者は全体の約3割です。AIを業務で使っていない理由は、「活用する業務がイメージできていない」が最も多い結果でした。
同じ白書では、AIを使う目的として「業務時間の節減」を挙げた事業者が8割を超え、「人手不足の解消」「業務の属人化解消」が続く結果です。AIエージェントの導入も、この3つのうちどれを目的にするかを先に決めると、任せる仕事を選びやすくなります。
白書の分析によると、研修会や勉強会もあわせて行った事業者ほど、効果が得られたと答えた割合が高い結果でした。当社では、AIエージェントの導入も道具選びより先に「どの仕事を任せるか」を社内で決めることが近道だと考えています。
AIエージェントに最初に任せる業務の選び方|4つの条件
最初に任せる業務は、まちがえても社内で直せる仕事から選びます。次の4つに当てはまるほど、AIエージェントに任せやすい業務です。
- できたものが社外に直接出ない(社内の資料やメモで終わる)
- 支払いや契約など、お金や約束が動かない
- 毎週くり返し出てくる
- 元の資料やページがあり、人が答え合わせできる
当てはまらない仕事も、すぐに外す必要はありません。そこで、仕事を「AIエージェントに任せる」「AIが下書きし、人が確かめる」「人が行う」の3つに分けます。分けてみると、どこまで任せられるかが見えてきます。
| 分け方 | 向いている仕事の例 | 人の関わり方 |
|---|---|---|
| AIエージェントに任せる | 取引先の会社概要の下調べ、社内の会議資料の要点まとめ | できたものを元の資料と見比べる |
| AIが下書きし、人が確かめる | お客さまへの返信メール、問い合わせの振り分けの案 | 中身を直し、送るかどうかを人が決める |
| 人が行う | 支払いの手続き、契約の判断、採用の合否 | AIは材料を集めるところまで |
社員からの同じ質問に答える仕事は、社内の決まりが文書になっていれば任せやすい仕事です。社内の問い合わせに答える仕組みは、社内チャットボットの記事でも紹介しました。
AIエージェント導入の進め方|中小企業の5つの手順
導入は、仕事の書き出しから始め、2週間の試しで広げるかを決めます。当社がAIの導入を支援する中でも、次の順で進めると社内の不安が小さく済みます。
- 1週間ぶんの仕事を、件数と担当者つきで書き出す
- 書き出した仕事を3つに分け、任せる仕事を1つだけ選ぶ
- 人が決める最初の部分と、人が確かめる最後の部分を紙に書く
- 会社の契約で使える機能と、入力してよい情報を確かめる
- 2週間試し、直したところを記録してから、次の仕事に広げるかを決める

手順3が一番大事なところです。当社では、仕事を「入口」「途中」「出口」の3つに分けて考えるよう伝えています。入口では人が目的と完成の形を決め、途中の調べる・作る作業をAIに任せきり、出口で人が確かめて決めます。
AIで「できる」と、AIに「任せる」は別の話です。送信や支払い、契約といった最後の判断は、AIにできる機能があっても人が持ちます。

手順5の2週間の試しでは、効果の大きさより「人がどこを直したか」を記録します。直した場所が分かれば、AIに渡す決まりを足すのか、その仕事は人に戻すのかを判断できるからです。
| 2週間で記録すること | 見ること | 次にすること |
|---|---|---|
| 人が直した項目と、その理由 | 同じ直しがくり返し出ていないか | くり返す直しは、決まりとして文書に足す |
| AIが「分からない」とした項目 | 元の資料が足りているか | 資料を足すか、その項目は人が埋める |
| 確かめる人の手間と感想 | 確かめる手間が、元の作業より軽いか | 軽くならなければ、任せる範囲を狭める |
当社では、直したところをAIに言葉にさせ、次の頼み方に足していく方法を勧めています。直しが減ってきたら、同じ条件に当てはまる2つ目の仕事に広げてください。
手順4の入力してよい情報の決め方は、社内の生成AIのルールの作り方で詳しく解説しています。RPA(決まった操作をくり返すソフト)も含めて自動化する仕事を選びたい方は、業務自動化の選び方の記事もあわせてご覧ください。
AIエージェントに任せる仕事を決める頼み方と出力の例
任せる仕事を1つに絞る作業も、AIに手伝わせられます。次の頼み方を、前の会話の流れがない新しい会話で1回実行しました。会社のようすと仕事の一覧は、説明のために作った架空の例です。当社のお客さまの事例ではありません。
頼み方の例
あなたは、社員20名ほどの会社でAIエージェント(目的を伝えると、手順を自分で考えて調べものや下書きなどを進めるAI)を初めて入れる手伝いをしています。下の【仕事の一覧】から、最初にAIエージェントに任せる仕事を1つ選び、任せ方を決めてください。
【会社のようす】
・社員20名。営業と事務が中心で、AIはチャットで文章を直す程度にしか使っていない。
・お客さまへのメールの送信、支払い、契約に関わる判断は、必ず人が行う決まりにしたい。
【仕事の一覧(1週間ぶん)】
1. 問い合わせフォームに届いた内容を読み、担当者に振り分ける(週30件ほど)
2. 見積もりの依頼に返すメールの下書きを作る(週10件ほど)
3. 毎週月曜に、先週の売上の表から営業会議用の要点をまとめる
4. 新しい取引先の会社概要を、公式サイトで調べてまとめる(週3件ほど)
5. 請求書の支払いの手続きをする
6. 社員からの「経費の精算のしかた」などの同じ質問に答える
【出してほしいもの】
1. 6つの仕事を「AIエージェントに任せる」「AIが下書きし、人が確かめる」「人が行う」の3つに分けた表(列:仕事/分け方/理由)
2. 最初に任せる仕事を1つ選び、選んだ理由を2〜3文で
3. その仕事の任せ方を、「人が決めること(入口)」「AIエージェントが進めること(途中)」「人が確かめて決めること(出口)」に分けて箇条書きで
4. 2週間試すときに、記録しておくこと(3つまで)
【条件】
・分からないところは推測で埋めず、最後に「確かめたいこと」として質問の形で並べる。
・ツールの名前や料金は出さない。
・効果の数字(何時間減るなど)は書かない。
出てきた答えのうち、最初に任せる仕事と任せ方の部分を抜き出します(全4項目と確かめたいことのうち、2〜4の一部を抜粋)。
出力の例
2. 最初に任せる仕事:4. 新しい取引先の会社概要の調査
公式サイトという公開情報を調べてまとめる仕事で、お客さまへの送信・支払い・契約の判断が入らないため、決めたルールの中で安心して任せられます。
人が決めること(入口)
・まとめる項目と書式(例:所在地、設立、事業の内容、主な商品・サービス、代表者など。項目は会社で決める)
・調べてよい範囲(公式サイトに限るのか、ほかの公開情報も見てよいのか)
・AIエージェントにやらせないこと(問い合わせフォームへの入力、先方への連絡、会員登録など)
AIエージェントが進めること(途中)
・それぞれの項目に、どのページから取ったかを書き添える
・見つからなかった項目は推測で埋めず、「見つからず」と書く
人が確かめて決めること(出口)
・出典のページを開き、大事な項目(会社名・所在地・事業の内容など)が合っているかを確かめる
・この取引先と取引を進めるかどうかの判断は人が行う(まとめは材料として使うだけ)
2週間試すときに記録しておくこと
1. 1件ごとに、人が直した項目と直した理由(誤り・古い情報・書式が違う、など)
2. 1件ごとに、AIエージェントが「見つからず」「迷った」とした項目と、実際はどうだったか
出力では、見積もりの返信メールや問い合わせの振り分けは「AIが下書きし、人が確かめる」に分かれ、支払いは「人が行う」になりました。最後には、資料の共有先や確かめる担当者など、社内で答える質問が並びました。その答えを埋めていけば、そのまま試しの計画として使えます。
主なAIエージェントの機能|会社の契約で確かめること
ふだん使っているAIのサービスにも、AIエージェントの機能が入ってきています。使えるかどうかは契約のプランで変わるので、導入の前に公式の説明で確かめます(※2026年10月24日時点)。
| サービス | 公式の説明で分かること | 確かめること |
|---|---|---|
| ChatGPT Work(OpenAI) | ファイルや許可した道具を使って仕事を進め、重要な操作は人が承認できる | 会社の契約で使えるか、つなぐ道具の範囲 |
| Microsoft Copilotのエージェント(会社ではMicrosoft 365 Copilotのライセンス) | 調べもの用のResearcherなど、Microsoftが作ったエージェントがある | Copilotのライセンスの有無 |
| Gemini Enterprise・Google Workspace Studio | エージェントをプログラムを書かずに作れる。決まった作業の自動化もできる | Gemini Enterpriseの契約があるか。Workspace Studioは、Workspaceのエディション(契約の種類)と管理者の設定 |
OpenAIのChatGPT Workの公式ガイドでは、進み具合を見ながら、重要な操作を承認できるとの説明です。MicrosoftのResearcherの公式ヘルプでは、会社のアカウントで使うにはMicrosoft 365 Copilotの追加のライセンスが要るとしています。
Agent Designerは、Gemini Enterprise(Googleの会社向けのAIエージェントのサービス)の中で、エージェントを作る機能です。GoogleのAgent Designerの公式ヘルプでは、決まった時刻に自動で動かすときも、ほかの人に関わる操作は止まって本人の承認を待つと説明しています。
Gmailやドライブの決まった作業の自動化には、Google Workspace Studioを使います。Google Workspace Studioの公式ヘルプによると、Business Starterなどのエディション(Google Workspaceの契約の種類)が対象です。
どのサービスでも、人の確認をはさむ仕組みは用意されています。ただし、何を確認の対象にするかを決めるのは会社です。前の章で書いた出口の決まりを、サービスの設定に合わせて当てはめてください。
AIエージェントの導入でつまずきやすいところ
つまずく原因は、機能よりも任せ方にあることが多いです。つまずきやすいところを、次の3つの観点から解説します。
・最初から社外に出る仕事を任せる
・決まりが文書になっていない仕事を任せる
・任せたあと、正しく終わったかを見ない
それぞれ見ていきましょう。
最初から社外に出る仕事を任せる
お客さまへの送信や発注を最初に任せると、1回のまちがいがそのまま社外に出てしまいます。社外に出る仕事は、社内の仕事で直し方が分かってから下書きとして任せるのが安全です。送るボタンを押すのは、慣れてからも人の役目です。
決まりが文書になっていない仕事を任せる
判断の基準が担当者の頭の中にしかない仕事は、AIエージェントも迷います。当社では、仕事が止まる原因の多くは判断の基準が言葉になっていないことにあると考えています。先に基準を1枚に書き出し、それをAIに読ませてから任せてください。
任せたあと、正しく終わったかを見ない
自動で動く仕事は、止まったり途中で失敗したりしても、だれも気づかないおそれがあります。当社でも、自動で動かしている仕事が正しく終わったかを、毎日決まった時刻に確かめる決まりにしました。だれが、いつ確かめるかまで決めて、はじめて任せたと言えます。
AIがもっともらしいまちがいを書くハルシネーションへの備えは、ハルシネーション対策の記事で詳しく紹介しています。
AIエージェントの導入と社員の研修|役割ごとに教えること
AIエージェントの研修は、全員に同じ中身を教えるより、導入での役割ごとに分けると無駄がありません。仕事を決める人と確かめる人、ふだん使う社員とでは、知っておくことが違うからです。
| 役割 | 研修で身につけること |
|---|---|
| 任せる仕事を決める人(社長・管理職) | 仕事を3つに分ける考え方と、AIに任せない判断の線引き |
| 出口で確かめる人(担当者) | 出典のページで答え合わせをする手順と、まちがいの見つけ方 |
| ふだん使う社員 | 入力してよい情報の決まりと、会社のアカウントでの使い方 |
当社が企業向けに行っているAI研修では、入力してよい情報の決め方や設定の確かめ方を、実際の画面で操作しながら学ぶ形です。AIエージェントでも、まずは会社の契約の画面で1つの仕事を一緒に動かしてみると、社員の不安は小さくなります。
社内で勉強会として進めたい場合は、生成AI勉強会の進め方で3回分のテーマの例を紹介しています。
AIエージェントの導入に関するよくある質問
まとめ|AIエージェントの導入は、任せる仕事を1つ決めてから始めよう
- AIエージェントは、目的から手順を組み立てて、いくつもの作業をまとめて進めるAIの仕組み
- 最初は、社外に出ずお金も動かない、答え合わせができる仕事を1つ選ぶ
- 入口と出口は人が持ち、送信・支払い・契約の判断はAIに任せない
- 使える機能は契約のプランで変わるので、公式の説明で確かめてから2週間試す
まずは今週、1週間ぶんの仕事を件数つきで書き出してみてください。
自分の会社ではどの仕事から始めればよいか、次の案内も参考にしてください。

メイカヒットでは、企業向けのAI研修と、AI経営顧問を行っています。
- AI研修:社員の方が安全にAIを使えるよう、入力してよい情報の決め方や設定の確かめ方まで、実際の画面で操作しながら学びます。これまでに5,000人以上が受講し、自治体や医師会、税理士、上場企業などでも研修を行っています。研修の内容を見る
- AI経営顧問:営業・事務・採用・社内の質問への回答など、会社の業務のうちAIに任せられる部分を、会社の仕組みとして作ってお渡しし、社員の方が使えるようになるまで一緒に進めます。
「うちの会社の場合はどう進めればよいか」といったご相談も、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。お問い合わせ種別は「AI導入・研修」を選んでください。

