見積もりAIは中小企業でどう使う?おすすめの種類と選び方・始め方

中小企業が見積もりAIを選んで使い始める順番を解説する記事のアイキャッチ

「見積もりにAIを使いたいが、うちのような中小企業でも使えるのか」

「おすすめの見積もりAIが多すぎて、どれを選べばよいか分からない」

「AIが出した金額を、そのままお客さまに出してよいのか」

見積もりには、聞き取り・計算・単価の当てはめ・確認が混ざっています。任せる範囲を決めずに選ぶと、使われずに終わりがちです。

この記事では、自治体や医師会・税理士・上場企業などで5,000人以上にAI研修を行ってきたメイカヒットが、中小企業が見積もりAIを選んで使い始める順番を解説します。

この記事を読むと、AIに任せられる範囲と自社に合う種類の選び方、すぐに試せる頼み方が分かります。

記事監修者

久保田 亮(株式会社メイカヒット代表)
AI研修 のべ5,000人

久保田 亮|株式会社メイカヒット 代表取締役

【経歴・実績】
・自治体・医師会・税理士法人・上場企業などで、のべ5,000人にAI研修
・某教育委員会でAIコーディネーターとして活動中
・マーケターとして500社以上と取引
・元テレビ局の報道記者(5年)
・AIハッカソンで世界1位の実績あり(事業計画ツールを作成)
・AIとマーケティングが学べるサロン「メイカラ」主宰

目次

中小企業の見積もりAIは「生成AIで下書き」から始める

中小企業が見積もりにAIを使うなら、最初は生成AIで見積書の下書きと聞き漏れの確認から始めるのが近道です。生成AI(ChatGPTやCopilotのように、文章で頼むと文章や表を作るAI)なら、追加のシステムを入れずに今日から試せます。

ただし、金額そのものはAIに考えさせず、自社の単価表の単価だけで計算させます。単価表にない項目とお客さまに確かめることは、AIに一覧にしてもらいましょう。件数が増えて単価表や過去の見積もりが整ってきたら、見積もりに特化したシステムを検討する順番です。

段階使うもの向いている会社
1. まず試す生成AI(ChatGPT、Copilotなど)と今の単価表見積もりが月に数件〜数十件で、形式がまだばらばら
2. 計算を固めるExcelの単価表とひな形、ルールで計算する仕組み同じ品目の見積もりが多く、計算のミスを減らしたい
3. 仕組みにする見積もりに特化したシステム、AI-OCR(紙やPDFの文字を読み取ってデータにする道具)、RPA(パソコンの操作を自動でくり返す道具)件数が多く、図面や過去の見積もりを毎回探している

見積もりAIに任せられる作業と、人が決める作業

見積もりの仕事を工程に分けると、AIが得意な作業と、人が決めるべき作業がはっきりします。AIに任せる範囲を、次の3つの観点から解説します。

この章の内容

・見積もりの工程ごとの分担
・AIとルールの計算の違い
・AIに金額を決めさせない理由

それぞれ見ていきましょう。

見積もりの工程ごとの分担

AIが手伝えるのは、聞き取りの整理・下書き・確かめることの洗い出しです。値引きや納期の約束など、会社として決める部分は人に残します。

工程AIに任せられること人が決めること
聞き取り問い合わせのメモから、必要な項目を表に並べるお客さまに何を聞くか
数量と計算単価表を渡して、単価表の単価だけで下書きの金額を出させる金額が単価表と合っているかの確認(Excelや電卓で検算)
過去の見積もり似た案件の見積もりを探して要約するどの単価を使うか
確かめること聞き漏れや、単価表にない作業を並べる追加で見積もるかどうか
提出送り状やメールの文面の下書き値引き、納期、最終の金額
見積もりの仕事を、AIに任せる作業・単価表で計算する作業・人が決める作業の3つに分けた図

AIとルールの計算の違い

見積もりを速くする仕組みは、AIだけではありません。決まった計算をくり返すなら、ルールで計算する仕組みやExcelの関数のほうが正確です。

仕組み得意なこと苦手なこと
生成AI文章の整理、表の下書き、聞き漏れの洗い出し同じ計算を毎回正しくくり返すこと
ルールで計算する仕組み・Excel単価×数量、組み合わせの可否のチェックルールにない案件
RPA見積もりの数字を別のシステムに写す作業画面や手順が変わったとき

たとえばアシストの事例(2018年・従業員1,000人を超えるソフトウェアの会社)では、見積もりを助ける仕組みを基幹システムとは別に作りました。使ったのは生成AIではなく、決めたルールどおりに判断する「ルールベースAI」です。見積もりを作る工数は平均60%、最大78%減ったと紹介されています。

大きな会社の事例ですが、決まった計算をルールで計算する仕組みに任せるほうが正確だという点は、中小企業でも変わりません。

AIに金額を決めさせない理由

生成AIは、もっともらしい間違い(ハルシネーション)を書くことがあります。単価を知らないまま頼むと、それらしい金額を作ってしまうおそれがあるためです。

金額は単価表から計算させ、出た表は人が電卓で確かめてから出します。間違いを減らす頼み方は、生成AIのハルシネーション対策で詳しく解説しています。

見積もりAIのおすすめの種類と、中小企業の選び方

見積もりAIは、ツールの名前より先に種類で選ぶと迷いません。種類ごとの特徴と選び方を、次の3つの観点から解説します。

この章の内容

・見積もりAIの4つの種類
・中小企業が選ぶときに確かめる4つのこと
・費用の考え方

それぞれ見ていきましょう。

見積もりAIの4つの種類

見積もりに使えるAIと自動化の道具は、大きく4つに分かれます。自社の手間がどこにあるかで、選ぶ種類が変わります。

種類できること向いている悩み
生成AI(ChatGPT、Copilotなど)問い合わせの整理、見積書の下書き、メールの文面まず費用をかけずに試したい
見積もりに特化したAIシステム過去の見積もりや図面から似た案件を探し、単価をそろえる担当者によって金額が違う
AI-OCR(AI-OCRの機能を持つDX Suiteなど)紙やPDFの文字を読み取ってデータにするFAXや紙の注文書を手で打ち直している
RPA(WinActor、RoboTANGOなど)決まった画面の操作をくり返す見積もりの数字を別のシステムに写している

ChatGPTとCopilotのどちらを使うかで迷う方は、ChatGPTとCopilotの違いも参考にしてください。

中小企業が選ぶときに確かめる4つのこと

選ぶ前に、次の4つを確かめておくと、入れたのに使われない失敗を防げます。

  • 見積もりの手間がかかっている工程はどこか(聞き取り、計算、過去の見積もり探し、転記)
  • 単価表と過去の見積もりは、1か所にまとまっているか
  • 今の販売管理や会計のソフトに、CSVなどでデータを渡せるか
  • お客さまの名前や原価を、AIに入れてよいかのルールがあるか

2つ目が「まとまっていない」なら、どの種類のツールを入れても効果は出にくくなります。先に単価表をそろえることが、最初の仕事です。

費用の考え方

費用は、種類によって大きく違います。生成AIは1人ずつの月額で使えます。見積もりに特化したシステムやAI-OCR・RPAは製品ごとに料金の決まり方が違うので、公式の料金ページか問い合わせで確かめてください(※2026年10月現在)。

元が取れるかは、次の式で試算できます。数字は自社の記録を入れてください。

試算の式
1か月に減る時間(時間)×担当者の時給(円)-ツールの月額(円)=1か月の差額(円)

始める前に、見積もり1件にかかる時間を2〜3週間はかって記録しておくと、使い始めたあとの時間と比べられます。支援を頼むときの費用の決まり方は、AIコンサルの費用と選び方の記事にまとめました。

見積もりAIの頼み方の例と、実際に出た結果

生成AIで見積もりの下書きを作るときは、単価表と「推測で埋めない」条件を一緒に渡します。下は、その頼み方と、Claude(生成AIの1つ)で1回実行して出た結果です。材料は説明のために作った架空の例で、当社のお客さまの事例ではありません。

頼み方の例
あなたは、小さな内装工事会社の見積担当の補助です。下の「問い合わせメモ」と「単価表」だけを使って、見積書の下書きを作ってください。
条件:
・金額は単価表にある単価だけで計算する。単価表にない作業は金額を空けて「単価表にない」と書く
・推測で数量や仕様を埋めない。分からないところは、最後に「お客さまに確かめること」として質問の形で並べる
・出力は「項目/数量/単位/単価/金額」の表と、小計、確かめることの一覧
問い合わせメモ:
事務所(2階)の会議室の床と壁を新しくしたい。広さは約20平方メートル。床は今タイルカーペットで、同じくタイルカーペットに張り替えたい。壁はクロスの張り替え。照明はLEDに替えたいが、数は未定。工事は土日希望。
単価表(税抜):
・タイルカーペット張り替え(既存撤去込み):1平方メートル 5,500円
・壁クロス張り替え(既存はがし込み):1平方メートル 1,600円
・養生・清掃:1式 15,000円
・廃材処分:1式 20,000円

項目数量金額
タイルカーペット張り替え(既存撤去込み)約20平方メートル110,000円
壁クロス張り替え(既存はがし込み)(未確定)(空欄)
LED照明への交換(数未定)(空欄)単価表にない
養生・清掃1式15,000円
廃材処分1式20,000円

出力の例(表のあとの部分。全7問の確認のうち3問を抜粋)
小計(現時点で金額が出ている項目のみ):145,000円(税抜)
※壁クロスとLED照明が未計上のため、確定の合計ではありません。
お客さまに確かめること:
1. 壁クロスを張り替える壁の面積は、何平方メートルくらいですか。(部屋の寸法・天井高、窓やドアの大きさが分かればお知らせください)
3. LED照明に替えたい照明は何台ありますか。今ついている照明の種類(蛍光灯、ダウンライトなど)も教えてください。
7. 既存のタイルカーペットの下地の状態に問題はありませんか。(下地の補修が必要な場合は、別途確認が必要です)

出力の表は、項目・数量・単位・単価・金額の5列のうち、「単位」と「単価」を省いて載せています(数量の「約20平方メートル」は、出力の「20(約)」と単位をまとめて書いたものです)。壁の面積を床の面積で埋めず、空欄にして質問に回した点が、条件を入れた効果です。

この下書きは、担当者が数字を確かめてから使うものです。聞き漏れの一覧をお客さまへの最初の返信に使えば、見積もりのやり直しが減ります。

問い合わせメモと単価表を生成AIに渡すと見積書の下書きと確かめることの一覧が出て、担当者が確かめてから提出する流れの図

見積もりAIを入れた中小企業の事例

見積もりに特化したAIシステムの例として、製造業向けの「匠フォース」を導入した会社の事例を紹介します。匠技研工業の導入事例によると、非鉄金属の加工を行う今井商工では、導入前に次の課題がありました。

  • 見積もりの対応が部長1人に頼っていて、仕事が止まりやすかった
  • 基準になる単価表がなく、リピート品でも価格が毎回違った
  • 手作業が中心で、1件の見積もりに3〜4日かかることもあった

導入のあと、見積もりの担当者は1人から5人に増え、仕事を分けられるようになったそうです。3〜4日かかることもあった回答は、最短で1日以内になり、平均で2日ほど短くなったと紹介されています(2025年6月公開の事例)。原文では、見積もりの仕事を標準化して属人化を解消したと説明されています。

仕事が1人に集まる形をほどく順番を知りたい方は、属人化を解消する手順をご覧ください。

中小企業が見積もりAIを使い始める4つの手順

見積もりAIは、小さく試してから広げるのが基本です。次の4つの手順で進めると、途中でやめることになっても、かけた手間と費用を小さく抑えられます。

  • 手順1:見積もり1件にかかる時間と、やり直しの回数を2〜3週間記録する
  • 手順2:よく出す品目の単価表を1つのファイルにまとめる
  • 手順3:生成AIで、上の頼み方を使って10件ほど下書きを作り、手で作った見積もりと比べる
  • 手順4:時間が減った品目から、ひな形やシステムに広げる

手順3の前に、お客さまの名前や原価をAIに入れてよいかを決めておくことが欠かせません。会社で使うときのルールの決め方は、生成AIガイドラインの作り方をご覧ください。

当社の研修でも、入力してよい情報の決め方を、実際の画面で操作しながら確かめるところから始めています。

見積もりの自動化でAIを使うときの注意点

見積もりの自動化では、金額の誤りと情報の扱いに気をつけます。とくに次の3つは、始める前に社内で決めておきましょう。

  • AIが出した金額は、必ず人が単価表と照らして確かめる
  • お客さまの名前・原価・図面を入れるときは、会社で契約したアカウントを使い、学習に使われない設定を確かめる
  • 値引きや納期など、会社として約束することは、AIの文面のまま送らない

無料の個人アカウントで社員がそれぞれ使い始めると、どの情報がどこに入ったかが分からなくなります。情報の扱いは、ChatGPTの情報漏洩を防ぐ設定もあわせてご覧ください。

見積もりAIと中小企業に関するよくある質問

ChatGPTやCopilotで見積書は作れますか?

作れます。ただし金額は単価表を渡して計算させ、出た金額は人が確かめてから提出してください。

Excelだけで見積もりの自動化はできますか?

単価×数量の計算や、ひな形への入力はExcelの関数でできます。似た案件探しや聞き漏れの洗い出しは、生成AIと組み合わせると楽です。

過去の見積もりや図面が少なくても始められますか?

始められます。生成AIで下書きを作る使い方なら、今の単価表があれば十分です。過去の見積もりを学ばせるシステムは、データがたまってから検討しましょう。

見積もりAIのおすすめは、どう選べばよいですか?

手間がかかっている工程で選びます。聞き取りや下書きなら生成AI、紙の注文書ならAI-OCR、別のシステムへの転記ならRPAが候補です。

見積もりのデータをAIに入れても大丈夫ですか?

会社で契約したアカウントで、学習に使われない設定を確かめてから使います。入れてよい情報を社内で決めておくことが前提です。

まとめ|見積もりAIは単価表をそろえて小さく試そう

中小企業の見積もりAIは、生成AIで下書きと聞き漏れの確認から始め、金額は自社の単価表で計算するのが基本です。

件数が増えたら、見積もりに特化したシステムやAI-OCR・RPAを、手間がかかる工程に合わせて選びます。

まずは、よく出す品目の単価表を1つのファイルにまとめ、上の頼み方で1件試してみてください。

自分の会社ではどの仕事から始めればよいか、次の案内も参考にしてください。

AI研修・AI経営顧問|AIの使い方と社内のルールづくりを一緒に考えます(お問い合わせフォームへ)

メイカヒットでは、企業向けのAI研修と、AI経営顧問を行っています。

  • AI研修:社員の方が安全にAIを使えるよう、入力してよい情報の決め方や設定の確かめ方まで、実際の画面で操作しながら学びます。これまでに5,000人以上が受講し、自治体や医師会、税理士、上場企業などでも研修を行っています。研修の内容を見る
  • AI経営顧問:営業・事務・採用・社内の質問への回答など、会社の業務のうちAIに任せられる部分を、会社の仕組みとして作ってお渡しし、社員の方が使えるようになるまで一緒に進めます。

「うちの会社の場合はどう進めればよいか」といったご相談も、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。お問い合わせ種別は「AI導入・研修」を選んでください。

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