株式会社メイカヒット(以下、当社)は、このたび神奈川県横浜市の都筑区医師会が主催する「第39回 かかりつけ医の在宅医療研修」に講師として登壇し、医療分野における生成AIの活用についてお話しいたしましたのでご報告いたします。
止めているのは制度ではなく、情報の不足でした
総務省の「令和7年版 情報通信白書」によると、テキスト生成AIサービスを使ったことがある個人の割合は、日本が26.7%でした。米国の68.8%、中国の81.2%、ドイツの59.2%と比べて、大きく差がついています(2024年度「最新の情報通信技術の利用動向に関する調査」)。
一方で、医療の現場では導入の成果がすでに数字で出はじめています。
- 日本電気株式会社(NEC)と東北大学病院が2023年10月から11月にかけて行った実証では、一部の診療科の医師10名の協力のもと、紹介状や退院サマリなどに記載する要約文章を新規に作成する場合と比較して、作成時間が平均47%削減されました
- 富士通Japan株式会社が導入を支援した独立行政法人国立病院機構名古屋医療センターでは、2024年12月に整形外科など複数の診療科で試験導入したところ、退院サマリの作成時間が一患者あたり平均28分から8分へと短縮されました。2025年10月31日からは全診療科で本格運用が始まっています
- 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)北海道病院では、院内に設置したオンプレミスの生成AIで診察時の会話からカルテの下書き(SOAP形式の草案)を作成し、電子カルテへ取り込む取り組みが2026年1月に始まりました。厚生労働省の「ICT機器を活用した勤務環境改善の先駆的取組を行うモデル医療機関調査支援事業」に採択された取り組みです
出典
総務省「令和7年版 情報通信白書」個人におけるAI利用の現状
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112210.html
日本電気株式会社「NEC、東北大学病院、橋本市民病院、『医師の働き方改革』に向けて、医療現場におけるLLM活用の有効性を実証」(2023年12月13日)
https://jpn.nec.com/press/202312/20231213_01.html
富士通Japan株式会社「富士通Japan、生成AIを活用した医療文章作成支援サービスを名古屋医療センター様に導入し、退院サマリを対象に本格運用開始」(2025年11月19日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000494.000093942.html
独立行政法人地域医療機能推進機構北海道病院・株式会社プレシジョン・株式会社シーエスアイ・NTTドコモビジネス株式会社「厚生労働省事業に採択、JCHO北海道病院でAIカルテ下書き実証開始」(2026年1月19日)
https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2026/0119.html
数字だけを見れば、導入しない理由はないように見えます。それでも進まないのはなぜか。研修の準備と当日の会話を通じて伺ったのは、誰かが反対しているわけではない、という話でした。
どこまでの情報を入力してよいのか。入力した内容は学習に使われるのか。サーバーが国内になければいけないのか。その線引きがわからないから、怖くて手を出せない。止めているのは制度ではなく、判断するための情報が届いていないことでした。
「AIでこんなことができます」で終わらせない

今回の研修で当社が最も重視したのは、便利な機能を紹介することではありません。研修が終わったあと、参加された先生方がご自身で使う範囲を決められる状態になっているかどうかでした。
そのために、次の順序で構成しています。
- 生成AIの仕組み(確率で次の言葉を予測しているだけで、AIは考えているわけではないこと)
- 日常業務での具体的な使い方と、指示の出し方
- AIエージェントによる業務の自動化と、医療分野での導入事例
- 情報漏洩・ハルシネーション・著作権という3つのリスクと、その対策
とくに時間を割いたのは、最後のリスク対策です。入力してよい情報は、自院のホームページに載せられる範囲までにとどめること。個人向けのプランは初期設定のままだと入力内容が学習に使われるため、必ず設定画面で学習をオフにすること。患者さんの情報を扱うなら氏名を置き換え、PDFの黒塗りは見た目を塗るだけでなく、専用のリダクション機能を使うこと。
当日は「Geminiで学習をオフにする方法を教えてほしい」というご質問をその場でいただいたので、設定画面を画面共有し、どこを開いてどのボタンを押すのかまでお見せしました。会場とZoomをつないだハイブリッド開催で、講演と質疑をあわせておよそ2時間半の研修となりました。
「100%安全とは言い切れません」とお答えした理由

質疑応答でいちばん多くいただいたのは、リスクの線引きについてのご質問でした。
診察の音声を録音して残すのは危険ではないか。カルテを丸ごと貼り付けて要約させている医師がいるが、法人契約なら問題ないのか。海外にサーバーがある以上、送信した時点で医療情報を国外に出したことになるのではないか。
いずれのご質問にも、当社は「大丈夫です」とは申し上げませんでした。学習をオフにする設定や法人プランでの契約によってリスクは大きく下げられます。ただし、事業者がそう説明しているという事実と、絶対に漏れないという保証は、別のものだからです。
当社代表の久保田は、テレビ局の報道記者として5年間、年間500本以上の取材現場に立ってきました。報道の現場で叩き込まれたのは、確認できたことと確認できていないことを混ぜない、という原則です。AIの研修であっても、この姿勢は変えません。歯切れの悪い回答に聞こえたかもしれませんが、持ち帰っていただくべきは安心ではなく、判断の材料だと考えているからです。
もう一つ、経験の浅い医師がAIに頼ることへの懸念も挙がりました。所見を自分で取る前に答えを見てしまうのではないか、というご指摘です。これについては、経験のない人ほどAIの誤りに気づけないため、順序が逆になると危ういとお答えしました。必要なのは、経験を積まれた方の判断や知見を組織のナレッジとして蓄積し、若手がそこを参照できる仕組みを先に用意することです。AIをどう使うかの前に、どこに何を貯めるかを設計する。これは医療に限らず、あらゆる組織で同じことが言えます。
AI研修・AI導入支援のご相談を承っております
当社は、企業・自治体・医療機関・教育機関に向けたAI研修と、業務へのAI導入支援を一貫してお請けしております。
「AIを導入したいが、どこから手をつければいいのかわからない」
「情報の取り扱いが不安で、現場に使わせる判断ができない」
「研修は実施したが、その後の業務が変わっていない」
こうしたご相談を、多くの組織からいただきます。
私たちが大切にしているのは、聞いて終わりにしないことです。仕組みを理解し、私生活で試し、自分の業務に置き換えて考え、チームのルールとして共有する。この順序を踏まないと、AIは一部の人の便利な道具のまま終わります。だからこそ研修では、機能の紹介より先に、どこまでなら使ってよいのかという線引きをお伝えしています。
AI研修の実施、社内でのAI活用ルールづくり、業務の自動化をご検討の企業様・自治体様・団体様は、ぜひ一度ご相談ください。全国どこへでも伺います。
事業者に利益を、消費者に笑顔を。今後も当社は、現場の方がご自身で判断できる状態づくりを支えてまいります。
お問い合わせは、HPの問い合わせページよりお願いいたします。


